「北海道夫殺し冷凍怪奇事件」は、平成14年6月に北海道の稚内市で発覚した事件。
北海道夫殺し冷凍怪奇事件
6月5日の午後3時過ぎ、北海道稚内市富士見4丁目にある不動産会社敷地内で、倉庫近くに置かれてあった冷凍庫の中から男性の腐乱死体が見つかったとの通報があった。
稚内署の調べにより、遺体が平成9年から行方不明の同市恵比須2丁目の市の職員、飯沼秀矩さん(50)であることが判明した。
同署によると、飯沼さんは平成9年11月に仕事を無断欠勤しており、妻からは12月に家出人捜索願が出されていた。
遺体は死後、時間が経過しており、腐敗が進行していた。
体が折り曲がるように冷凍庫に押し込まれ、毛布がかけられた状態だった。
不動産会社が前所有者の女性から家を買い取った際、鍵を受け取って家に入ってみると、冷凍庫が家の中に取り残されてあった。
不動産会社社員が不審に思いながらも、一旦は冷凍庫を会社に運ぶ。
後日、冷凍庫の中から何かが腐ったような臭いがしたため、不動産会社社員がふたを開けると人間の足の指が見えた。
不動産会社社員は驚いて冷凍庫のふたを閉め、警察に通報して事件が発覚した。
妻の逮捕
遺体発見から十数時間後の平成14年6月6日、冷凍庫が残された家を売却した稚内市内のホステス、飯沼明美(40)が夫の秀矩さんに対する殺人容疑で逮捕された。
逮捕後、明美は平成9年11月26日に精神安定剤を溶かしたみそ汁を秀矩さんに飲ませて眠らしてから、ネクタイで絞殺したと自供した。
その後の調べで判明
明美は、夫の秀矩さんを殺害したうえ、遺体を自宅の冷凍庫に入れて4年半遺体とともに暮らしていたことになる。
近所の人には、秀矩さんが突然家出をしたと言い、警察には捜索願を出していた。
警察の取り調べにより、「平成11年に生んだ子供を殺し、自宅に隠していたが、逮捕された年の5月、引っ越す前にごみと一緒に捨てた」と、自分が生んだ生後2か月の赤ん坊を窒息死させたことも自供した。
明美の自供にもとづいて、家庭から出されたごみが埋め立て処分される同市声問村更喜苫内(こえといむらさらきとまない)ごみ処分場を捜索すると、7月3日に男の子とみられる乳児の白骨化した遺体が見つかった。
飯沼明美の生い立ち
飯沼明美は、昭和36年8月19日に北海道夕張郡栗山町で出生した。
明美が生まれた4年後に両親は離婚し、明美は父親に引き取られた。
父親はその後再婚を繰り返し、明美は異母妹と共に育った。
18歳になると稚内市内のスナックで働きだし、客として出入りしていた夫の秀矩さんとはスナックで出会った。
昭和55年9月13日、明美が19歳のときに秀矩さんと結婚する。二人の歳は14歳離れていた。
稚内市恵比寿2丁目に引っ越したのは、昭和61年11月の頃だった。
その後、明美は昭和62年と平成7年に男児を出産した。
平成11年に殺害した赤ん坊は、父親が誰か不明ではっきりしていない。
犯行動機
逮捕後、明美は「自分の借金などで夫婦の間にはトラブルが絶えなかった。別れてくれないので殺すしかないと思った。酒を飲んでは暴力を振るわれ耐えられなかった。」と話している。
明美には浪費癖があって何度もサラ金から金を借りていた。
明美は、稚内市にあるタクシー会社でもタクシー料金を払わない客として有名だったようだ。
平成12年頃、明美はある男性と親しくするようになる。
男性との新生活を始めるために、平成14年1月、秀矩さん名義の自宅所有権を財産分与の形で自分の名義に所有権移転している。
その後、新生活のためにお金を作ろうと自宅を売却。
売った家に、遺体の入った冷凍庫を置いてきてしまい、夫の殺害が明るみに出てしまった。
何とも間抜けとしか言いようがない。
判決
平成15年1月20日、求刑20年に対して、懲役15年の判決が下った。
実録 北海道夫殺し冷凍怪奇事件
この事件を題材にした作品がビデオ化されている。
稚内で実際に起きた猟奇殺人事件の真相を、細川ふみえ主演で映像化した実録サスペンス。97年の暮れ、北海道・稚内で夫と暮らす飯田知美は、夫を殺害し遺体を冷凍庫に封印する。それから4年の歳月の後、腐乱した遺体が発見され、知美は逮捕される。
【スタッフ&キャスト】監督:東真司 製作:岡田国昭 脚本:気仙沼知子/桐沢康平 出演:細川ふみえ/井田國彦/武蔵拳/西川弘志