名古屋妊婦切り裂き殺人は、昭和63年(1988)3月18日に名古屋市中川区にある新興住宅街のアパートの一室で起こった猟奇殺人事件。
被害にあったのは、27歳の出産予定日を5日過ぎている妊婦だった。
夫が帰宅してみると、部屋は真っ暗なのに赤ん坊の声だけが聞こえてくる。
部屋に入ってみると、妻が両足をしばられた状態で倒れており、両足の間には血まみれの赤ん坊がいた。
その後、犯人の足取りがつかめず、平成15年(2003)に未解決のまま時効が成立した。
名古屋妊婦切り裂き殺人事件
1988年3月18日、妻・A子さん(27)は出産予定日を5日が過ぎていた。
午後7時40分頃、夫である会社員の男性・B男さん(31)が帰宅すると、部屋は真っ暗で洗濯物も干したままだった。
ドアノブに手をかけると、いつもは施錠してあるのにその日は鍵がかかっていなかった。
電気をつけて室内に入ってみると、赤ん坊の泣き声だけが聞こえてくる・・・・・・。
恐る恐る奥の部屋にB男さんが近づくと、A子さんは両手をしばられ、両足を大きく開いた状態で、首にはこたつのコードが巻かれて倒れていた。
慌てて駆け寄ってみたが、A子さんは身動き一つしない。
そして、大きく開いた両足近くには、弱弱しく泣き続ける血まみれの赤ん坊がいる。
B男さんが慌てて救急車を呼ぼうとすると、いつもあるはずの場所に電話機がなかった。
周りを見てみたが、やはり電話機は見当たらない。
仕方ないので、階下の住人宅に行き電話を借りて救急車を呼んだ。
A子さんのお腹は縦に切り裂かれており、直接の死亡原因はこたつのコードで首を絞められたことによる窒息死だった。
赤ん坊は、奇跡的に助かった。
猟奇的殺人
遺体状況からA子さんは絞殺された後、腹を鋭利な刃物で切り裂かれたということが分かった。
下腹部からみぞおちに38センチにわたって切り裂かれ、子宮も切り裂かれていた。
切り裂かれた子宮から、お腹にいた胎児が取り出されていた。
胎児を取り出した後、切り裂いた子宮に「コードを引きちぎった受話器」と「ミッキーマウスのキーホルダー」を詰め込んだということも分かった。
流し台では、犯人が血を洗った形跡があり、指紋はきれいに拭き取られてあったという。
犯人の謎
どうして犯人は、子宮に電話機とキーホルダーを詰め込んだのかが分からず、犯人の異常性しか分からなかった。
この事件は犯人の特定に至らず未解決となったが、様々な謎が残っている。
被害者女性の夫
最初の疑惑は被害者の夫に向けられた。
帰宅後、出産予定日を5日過ぎているA子さんを探そうとせずに服を着替えていた。
記者会見の前に妻がワイン好きだからと、報道陣を前にワインを霊前に供えたことが仰々しかったという。
しかし、夫は事件当時、会社にいたためアリバイが完全に成立していた。
隣の空き部屋に見知らぬ男性の出入りがあった
A子さんは、生前に友人に対して、自分たちの部屋の隣が空き部屋なのに見知らぬ男性が出入りしていて不安と告げていた。
事件当日の午後1時50分から午後3時までこの友人と一緒で、友人が帰る際、部屋の鍵を開けたまま駐車場まで送っていた。
アパートは2階建てで、1階と2階にそれぞれ2部屋ずつあり、被害者宅は2階の西側にあって東側は空き部屋だった。
1階に住む住人によると、事件当日の午後3時過ぎ、30歳前後で丸顔の不審な男性が訪ねていた。
その際、「ナカムラさん」のお宅を知りませんかと聞いてきたが、気味が悪くて知らないといってドアを閉めたという。
ちなみに被害者の名前は、「ナカムラ」ではない。
事件があった時刻については、悲鳴や物音は何もなく、夜に警察が来たことで初めて事件を知ったという。
事件当日、エンジンをかけっ放しにした自動車の目撃情報や、午後4時30分と午後7時頃にも周辺をうろついている男性の目撃情報があった。
物的証拠
今回の事件では、凶器が見つからず、犯行現場に何も残されてなかった。
指紋はきれいに拭き取られ、台所の流しには血をきれいに流した後まであった。
A子さんは、家庭用品販売のビジネスをしていて、事件当日の午後1時50分から午後3時まで一緒にいた友人に脱臭剤を販売している。
売上金は財布に入れたが、財布は売上金と一緒に犯人に盗まれている。
A子さんは、部屋の鍵を開けたまま友人を駐車場まで送っており、その隙に犯人が部屋に侵入したといわれている。
犯人は土足で上がり、靴の大きさから大人の男の可能性があるという。
医学の専門知識があるものの犯行
腹部が鋭利な刃物で2,3回同じ箇所が手際よく切られていたことから、医学の専門知識を持つ者の犯行と考えられた。
怨恨による犯行
A子さんは、家庭用品販売のビジネスをしていたが、マルチ商法まがいと言われたことがあった。
「ミッキーマウスのキーホルダー」と「電話機」をかけて「ねずみ講」を意味しているのではないかといった意見があった。
時効成立
犯人の動機が分からないまま、2003年3月18日に時効が成立した。
結局、犯人が捕まらなかったため、犯人は社会のどこかで生活している。
犯人はどこで生きているのだろうか。
血まみれで発見された赤ん坊は、一命を取り留め、元気に成長したという。