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平成6年2月18日、世田谷区のアパートで青山学院大学の学生Mさんが自室で殺害されているのが発見された。

 

被害者のMさんは、パイロットを夢見て航空大学に進学することが決まっていた。

Mさんの夢を奪った犯人は、当時20歳の出水智秀と飯田正美の男女二人組だった。

世田谷青学大生殺人事件

平成6年2月18日、世田谷区のアパートで青山学院大学の学生Mさんが、自室で何者かに刃物で殺害されているのが叔母によって発見された。

Mさんは、頭部や腹部を刺されたうえ、首にビニールひもがまかれて横たわっていた。

 

警察の現場検証により、Mさんの隣に住む大学生のHさんの部屋から血を拭いたタオルや、Hさんのものではない男物の服や女性の靴が発見された。

Hさんは、事件当時は実家の宮崎に帰省しており、警察がHさんに事情聴取を行ったところ、当時20歳の出水智秀と飯田正美の男女二人組の名前が浮かび上がった。

Hさんと飯田正美は、中学時代の同級生ということも明らかとなった。

 

出水智秀と飯田正美の二人は、Mさんを殺害した後、2月2日にガスコンロを使って無理心中を図ろうとして静岡県熱海市の別荘に侵入した。

二人は、別荘内にガスコンロを持ち込み、心中しようとしてガスを爆発させたが、出水は全身やけど、飯田は軽いやけどを負っただけだった。

そして、二人は病院に運ばれたところを逮捕された。

二人の出会い

出水智秀と飯田正美の付き合いは、平成5年の2月、名古屋市で出水が飯田をナンパしたことから始まった。

 

その後、二人は車上狙いと窃盗を繰り返しながら、大阪、名古屋、東京、宮崎、福岡と、各地を転々としている。

金に困れば車上ねらいや窃盗をして金を稼いでいたが、やがて二人は美人局を始めることを思いつくようになる。

 

二人のターゲットとなったのが中学時代に飯田と交際していたHさんだった。

二人の計画は、まず、飯田がHさんを誘惑し、その後に出水が現れて現金を脅し取るというものだった。

そして、Hさんからは二度にわたて現金を脅し取ることに成功している。

 

二度にわたってHさんから現金を脅し取った出水は、平成6年2月に三度目の恐喝をするために福岡から東京へと向かった。

出水からの電話で危険を感じたHさんがアパートを離れて実家の宮崎に帰郷したため、出水と飯田がHさんの家に着いたときは部屋には誰もいなかった。

出水と飯田はアパートの裏口から侵入してHさんを待つことにした。

 

Hさんの金を目当てにしていた出水は、やがて残金が千円ほどになり、部屋にあったビニールひもで心中を思いつく。

まず飯田に自分の首を絞めて殺すように命令したが、彼女が躊躇してしまい失敗に終わった。

 

心中に失敗した後に出水が思いついたのが、隣の部屋の住人から金を奪うことだった。

青山学院大生を呼び出して殺害

2月15日、飯田が、隣に住む青山学院大学生Mさんを換気扇が壊れたといって誘い出す。

隠れていた出水がナイフで脅して現金5万3千円とキャッシュカードを奪ったうえ、Mさんを縛り上げた。

 

縛られたMさんが命乞いをすると、出水は死ぬ前に飯田を抱かせてやると言って、飯田に命令した。

飯田は、最初のうちは命令に抵抗していたが、出水が強く迫ったため、諦めて裸になりMさんにまたがる。

反応を眺めていた出水は、Mさんの上に重なった飯田を見て、彼女に嫉妬したのか突如彼女をMさんから引き離し、自ら彼女を抱いた。

 

事を終えた後、Mさんが隙を見て逃げ出すと、慌てた出水が飛びかかってMさんの腹、左胸、頭をナイフで刺した。

そして最後にMさんの喉を切ったうえ、ひもで首を絞めて息の根を止めた。

異常性交

この事件が話題となった理由の一つが、出水が自分の彼女と被害者との性交を命令したことだった。

 

出水は、飯田と付き合い始めると、たびたび彼女の男性遍歴を訊ねて相手に嫉妬していたそうだ。

このことは出水が美人局の相手にHさんを選んだこととも関係している。

判決

逮捕されたとき、飯田正美は妊娠7週間だったが、彼女は出産することを選んだ。

なぜ出産を選んだかについて問われると、「好きな人との間にできた子を殺せば、私は二人殺すことになってしまうので、産もうと決めた」と答えている。

 

飯田は獄中で出産したが、祖父母が引き取るのを拒否したため、乳児院・児童養護施設に送られた。

 

平成6年9月5日、出水に対して無期懲役、飯田に対して懲役15年の判決が下った。

 

 

参考文献

「殺人者はそこにいる 逃げ切れない狂気、非情の13事件」新潮45編集部編