Pocket

名古屋アベック殺人事件は、足立区で起きた「女子高生コンクリ―ト詰め殺人事件」、栃木県で起きた「栃木リンチ殺人事件」と並んで未成年者の凶悪事件として有名な事件。

1988年2月、名古屋市緑区の県営大高緑地公園でデートをしていた男性(19)と女性(20)の若いアベックが突如、武器を持った若者複数名に襲撃され、山中に連れられ拉致監禁の末に嬲り殺しにされた。

名古屋アベック殺人事件の概要

17歳から20歳までの不良グループ(主犯格の少年A19歳、少年B17歳、少年C18歳、高志健一20歳、少女D子17歳、少女E子17歳)は、日常的にアベックを襲撃して金品を奪う行為をしていた。

 

1988年2月23日、この日も金城埠頭で二組のカップルを襲い金品を奪っていた6人は、その後、大高緑地公園に移動した。

大高緑地公園に移動した6人は、駐車場に停まっていたチェイサーに乗車していた野村さん(19歳)と末松さん(20歳)を取り囲んだ。

 

運転席から野村さんを引きずり出すや否や、木刀と鉄パイプを持った6人は野村さんを殴打する。

D子とE子は、助手席に座っていた末松さんを引きずり出して上半身裸にさせ、足蹴にして木刀で殴りつける。

不良グループは、怯えて無抵抗の末松さんを殴り続けた後、藪の中に連行して全裸にさせてかわるがわる強姦した。

強姦している間も、野村さんの車は破壊され、野村さん自身にも暴行が加えられた。

殴打された野村さんは、耳の後ろから吹き出すように出血していたという。

そして、末松さんを全裸にして主犯格の少年Aが「やきを入れろ」と言い、代わる代わるタバコの火を末松さんの肩、腹、背中、乳房等に押し付けた。

末松さんに対するリンチを見た野村さんは、「彼女だけは助けてくれ」と頼んだが、少年らは野村さんに暴行を加えるだけだった。

 

少年Bが末松さんの両足首をもって広げ、陰部にシンナーをかけてタバコの火を腹部に押し付けたが、その時には末松さんは放心状態でされるがままだったという。

 

24日午前6時頃、人通りが増えてきたことから、6人は野村さんと末松さんを拉致することを決意する。

車中では末松さんが泣き続けていた。

 

怪我の酷い野村さんを見て主犯格のAが野村さんと末松さん殺害を提案する。

一旦、用事を理由にD子が抜け、翌日24日の午前1時40分頃に再び合流。

死体処理に使用するスコップやロープを用意し、午前4時30分に愛知郡長久手町の卯塚公園墓地に到着した。

 

Bは野村さんを車から降ろし、両手をロープで縛った。

Aは野村さんを正座させ、ロープを二重に首に巻きつけ、一方の端をBに渡した。

野村さんは「助けてください」と命乞いしたが、AとBは命乞いを無視、ロープを綱引きのように引っ張り合って野村さんの首を絞めて絶命させた。

野村さんの遺体を車のトランクに積み込んだ後、泣き続ける末松さんを連れて名古屋港埠頭に戻る。

 

末松さんは途中、「外を見たい」と懇願して許される。

末松さんは、6人のスキを見て自殺を図ろうと飛び出したが、Bに捕まって車に戻された。

不良グループは末松さんを連れてAのアパートに行き、Bが末松さんを強姦する。

 

翌25日の午前2時、三重県の大山田村に到着した一行は、死体を埋めるための穴を掘る。

殺害される直前、声を押し殺して涙を流しながら末松さんは野村さんの死体を見ることになる。

午前3時頃、下着一枚にさせられた末松さんの首に、AとBがロープを巻き付ける。

末松は最期に「やるなら早くしてください」と叫ぶと、AとBはロープを引っ張り合った。

末松さんは手足をバタバタさせた後、しばらくして動かなくなった。

被害者

被害者の野村さんと末松さんは、二人とも理容師だった。

若い二人は、将来は自分たちの店を持つことを夢見て貯金をしていたという。

 

お互い忙しい合間をぬってのデート中の出来事だった。

判決

目撃情報をもとに主犯格のAが警察に逮捕されると、続けて残りの5人は逮捕された。

 

当時、19歳だったAは、名古屋地裁で「未成年だから死刑になるはずがない」と豪語していた。

このことが裁判官の心証を悪くし、1989年6月、名古屋地裁はAに対して死刑を、少年Bに対しては無期懲役を言い渡した。

情状酌量の余地なしとの判決だった。

 

「少年だから大した罪にならない」と逮捕後に発言していた少年Aは、第一審の判決を不服として控訴する。

名古屋高裁は一審判決を破棄し、「矯正の可能性が残されている」として少年Aに無期懲役を言い渡した。

 

少年Aと少年Bは無期懲役、他の4人に対しては有期刑が言い渡された。

出所した4人のその後

無期懲役刑が言い渡された少年Aと少年Bを除いた他の4人は刑期を終えて現在出所している。

被害者家族である野村さんの父親が誰に看取られることもなく寂しい死に方をしたのとは違い、出所した4人は、被害者に謝罪することなく、それぞれが家庭をもって自分たちの人生を送っているという。

 

 

 

参考文献

犯人直撃「1988名古屋アベック殺人」少年少女たちのそれから

殺戮者は二度わらう―放たれし業、跳梁跋扈の9事件

絞首刑 青木理著

戦後異常殺人事件史 別冊宝島編集部編